2020/12/20本当はもう少し煮詰めてから書きたかった記事ですが、
色々とタイミングも良い(悪い?)のでここらで公開しようと思います。
また何か情報があれば追記します。
さて、皆さんおなじみのBucephalandra属、
実質的に原産地インドネシアからの輸入がストップしてしまいました。
とはいえ、もう十分日本国内に数(種数)があり、
新しいものが続々見つかっているというような段階でもないので、
手元で作る方向になってほしいと思っています。(アグラオネマも)
セルフでも異種間交配でも十二分に楽しめるはずです。
ちなみにブセファランドラ属はサトイモ科のSchismatoglottideae、
アグラオネマ、ホマロメナとは別グループで、花の挙動が異なります。
でも、色々なサインを見落とさなければ意外と簡単に結実します。
※交配種は後で追跡できるように、
コードなどを付けてしっかり管理してください。
市場に出す場合は特に。
というわけで、まずは簡単な説明から…
写真はブセの仏炎苞(Spathe)を取り除いたもの
①〜④全部が肉穂花序(Spadix)です
以下、拡大推奨
①付属体(仮雄蕊)ホマやアグラであればここから花粉が出るわけですが、ブセの場合これは付属体、いわゆるappendixというやつで、テンナンショウにあるのと同じものです。ここをずっと見てても花粉は出ません。
②雄しべこの二段目がブセファランドラ属の雄しべです。“牛角を持つ男の頭”という属名の由来にもなっています。
この角の先端から花粉が出ます。
③境界弁(仮雄蕊)
関連の論文ではinterstice staminodesと呼ばれている部分。
これに対応する日本語はおそらくまだ存在しないので、
とりあえず境界弁(仮雄蕊)とします。
これも①と同じく雄しべが変化したもので、
ブセと他の近縁種を見分ける重要な手がかりにもなります。
受粉後はこれがそのままコップの蓋になり、
内部の雌しべと未熟なフルーツを保護します。
④雌しべ
雌しべです。
仏炎苞の上部、白く剥がれ落ちる部分ではなく、
下部、薄緑のコップ状の部分に包まれています。
ここにハケなどで花粉を付けてやります。
ホマやアグラと同じく、ブセファランドラも雌性先熟です。
朝、水槽のライトが付いて数時間後、
仏炎苞が丸く膨らみ、少し隙間ができたら開花です。
これが…
↓こうなったら開花
このタイミングで仏炎苞を取り除いたのが、
下の写真です
↓
当日の日中、6時間程が雌しべの寿命のようです。
この間に他の雄しべから取った花粉を付けてやる必要があります。
その後、夜から翌日朝にかけて、
受粉の可否に関わらず、肉穂花序に変化が見られます。
↓
前の写真と比べて(同じ花ではありませんが)、雄しべと境界弁が下に開いてきたのがわかるでしょうか?
特に境界弁の動きは顕著で、白い花弁のような姿に。これは雄しべが開花準備に入った合図で、この段階ですでに雌しべは役割を終えています。
そして開花から24時間後(開花翌日の朝〜昼前)
↓仏炎苞上部が自然に剥がれ落ち(※取り除かなかった場合の写真)↓雄しべの角の先端から花粉が押し出されます。粉状ではなく、花粉塊や糸状(画像)であることが多いです。これを回収し、必要な場合は粉状にして、最初の写真のような開花直後の雌しべにつける必要があります。このあたりは僕のInstagramにあるアグラオネマの受粉動画なども参考にしていただければと思います。花粉の寿命はあまり長くないようなので、その場で別の花に付けましょう。まあブセはよく咲くのでこのへんはクリアしやすいでしょう。
受粉後も独特の挙動が見られます。
↓開花から5日ほどで役目を終えた付属体と雄しべは落ちてなくなり、、
受粉が成功していれば子房が膨らむと同時に、境界弁が緑色に変化していきます。↓少し肉厚に、蓋としての機能へシフトしていることがわかります。↓
やがてフルーツが熟してくるに従って境界弁は持ち上げられ、種が完成した頃に蓋の役割を終えて剥落します。熟したフルーツは弾けるわけではなく、萎む感じです。↓↓自然下では子房を覆う仏炎苞下部のコップが残った状態なので、
そこに水滴が落ちることで種子が飛散します。受粉からここまで二ヶ月足らず。めちゃくちゃスピーディーですね。↓育成下では水を張った小さいプラカップなどに入れて果肉を除去してやり、種子だけを取り出して播種します。パルダリウムなどであればほったらかしでも育つと思います。
ざっとこんな感じでしょうか。受粉の成否や開花のタイミングがとりやすい分、よく観察すれば他のサトイモよりも楽しいかもしれません。ぜひ一度挑戦してみてください。